「ちょっと、好きって言ってみてくれませんかね」
「っ、はぁ!?」
「いやぁ。毎日元気な怒声は聞くけど、可愛い声は聞かねえなぁって思いまして」
「な、なんでそんなもん聞かせなきゃいけないか!
妄想で完結しておけ!」
「ほーう。じゃあ妄想の中であーんなことやこーんなことまでさせても……?」
「い、いやダメだ!
妄想もやっぱ禁止!」
「じゃあたまには可愛い声を現実でも聞かせてほしいなぁ?」
怒り狂って顔を真っ赤にするその顔も可愛い。またいつものようにその可愛い顔が見たかっただけで、実際に期待なんかはしてなかった。
「――、き、」
「ん?」
「す、すき、だぞ」
「――」
潤んだ目が、俺の目を覗いた。
お互い真一文字に結んで、ぷるぷると震えていた口がだんだんと歪んで、汗がひとつ、横を流れた。
「――だぁ! 何で黙るか! 言ってやったんだから何か言え!」
歪んだ口が開いて、いつもの声が響く。叩きつけられる拳が柔らかい。
「笑いもしないで黙り込むな!
何か言――わっ」
「うるせぇ」
「な、なにを、――、」
引き寄せた胸の中でキッと目を吊り上げた彼女の後頭部を掴んで、うるさい口を塞ぐ。
「あんまりそういうギャップ、他の男に見せるなよ」
息継ぎの一瞬の間隔で吐く。声を上げかけた口をまた塞ぐと、不満そうな、満更でもなさそうな乱れた吐息が俺の口の中から直に脳内に響く。
(俺が、こりゃハマって動けねーや)
腰がだんだん砕けてきた彼女を抱きながら、砕けそうな理性を必死に繋ぎ止めた。